天王洲カップ

 昨日は天王洲カップに参加しました。今回は対局結果(何対何でどちらが勝ったか)を書いていません。これは棋譜を並べる時に結果が分かっていない方が面白いかな、と思ったからです。もしも最初に結果が知りたい時は棋譜右下の「>|」をクリックして下さい。終局図と結果が表示されます。


Yuji Miyazaki - Takeshi Murakami

 1回戦は宮崎裕司四段。この試合は対局中は白優勢を感じていたのですが、ゼブラで分析してみるとずっと互角の形勢だったようです。44の最善はg2で引き分けの形勢ですが、左辺を与えた上に上辺と右辺も与える手なので、これは打てませんね。51が緩手で再び引き分けの形勢に。51が打たれた局面で白には有力な手としてb1とb2がありますが、どちらかが引き分けでどちらかが2石負けです。読者のみなさんはどちらを選びますか?
 私はb2と打ったのですが2石損の悪手。白b1→黒a1→白b2なら引き分けでした。時間のない宮崎四段はノータイムで53a7。「ラッキー!」と思った私はa6に当て。これで左下が連打できます。この連打が成立しては白勝ちだろうと思ったのですが、残念ながら2石負け。宮崎四段は「連打を見落としていました…」とコメント。私も53は悪手で、正しく打てばもっと差がついていたのだろうと思ったのですが、実は53は最善でもしもa6ならば白2石勝ちでした。もしも宮崎四段が連打に気付いて、連打を避けようとしたら私が勝っていたわけです。運がなかったとも言えますが、やはり52でb1なら引き分け勝ちになることを読み切れなかったのが敗因だと思います。「速く正確な石数計算」が重要ですね。



Tetsuya Nakajima - Takeshi Murakami

 2回戦は中島哲也八段。お互い1回戦を落としており、負けた方は2連敗スタートとなる厳しい対局です。伏せ石に勝った私は白を選びました。このところ中島八段には白でことごとく負けているので、なんとか一矢を報いたいという気持ちでした。18で今回はf5を試みました。22となった形は白が悪そうに見えますが、種石がないために黒も簡単にはいきません。44は会心の一手。右辺はいずれにしろ捨てることになりますが、右下から捨てると黒g1と打たれて右上でTOF(4個空き3個打ち。黒が4個空きのうち3手打てる)が成立します。44はそれを防いだ手で、黒h1と打たせてから白g7と打つ狙いです。難しいのは52。読者のみなさんだったら52をどこに打ちますか?
 52a5は失敗です。黒a6→白a1→黒h8→白g8→黒パスで左下がハイパー偶数(黒から打てない偶数空き)になり、白は手止まりを打てずに負け。途中白a7か白b8を入れると手止まりは打てますが、その代わりに左辺か下辺を黒に与えることになりやはり勝てません。
 52a6も失敗です。黒a5に当てられるとa1に取れません(取ると黒h8→g8の連打)。右下連打を防ぐために以下白a7→黒a8→白b8と下辺に割り込んでからa1を取るしかなく、左辺と左下の手止まりを黒に与えるために白勝てません。
 正解は52a1です。以下実戦の展開で細かく白の勝ち。58は白2石勝ちを数えて打ちましたが、a7なら4石勝ちでした。残り15秒あったので、a7も数えるべきでした。ともあれ、久しぶりに白を持って中島八段に勝つことができて非常に嬉しかったです。



Yuzuru Kato - Takeshi Murakami

 3回戦は加藤譲二段。20では白f2→黒g4という展開が一般的ですが、研究されているような気がしたのでb4に外しました。以下はお互いに長考合戦。28は種石切りを目指した手です。31はa2と取られるほうが嫌でした。33も保留されるほうが嫌でした。白はb7とライン通しを狙っていくことになりますが、左辺a6→a7の交換がなければ白b7に対して黒a6で切る手が残っています。35が敗着。白b7をくらっては勝てません。ここは黒g3→白??→黒g2でまだ互角でした。既に白勝勢ですが、49は好手。うっかりh8に取ると白g7→黒g6→白h7でe8に入れず黒大敗となります。



Shu Tanaka - Takeshi Murakami

 4回戦は田中周1級。1級とはいえ1回戦で中島八段を倒しています。慎重に手を進めました。23は疑問。ここは保留して、将来的にa2で一手稼ぐ余地を残しておく方がベターでした。白はc5~f2のミニライン通しをキープして優勢を築きます。敗着は39。ここはa6が嫌でした。これならまだまだ難しかったと思います。40と打てては白勝勢。しかし敗勢になってからも田中1級の着手は正確で、ほとんど石損をしません。例えば、50までの局面で皆さんならどこに打ちますか?
 51ではg1→白b8→黒h8なら下辺を確保できますが、以下白h7→黒b2→白h4→黒パス→白a1→黒パス→白h1→黒パス→白g2!→黒パス→白h2と怒涛の5連打をくらって黒の大敗となってしまいます。だから田中1級の選んだ51b8が正解なのでした。



Hiroki Nobukawa - Takeshi Murakami

 5回戦は信川紘輝四段。9には驚きました。以下未知の展開。24~26で白良しと読んでいたのですが、27が私の見落としていた絶好手! 24ではa6と打っておくべきでした。しかし黒も35が緩手。この一個空きは、右辺方面が埋まって黒g2→白h1→黒g1という割り込みに使うのが強力なので、そのような展開を目指して黒f8→白f7→黒h6と打つのが正しい構想でした。48となっては黒下辺方面に打たざるをえず、黒が下辺に手をつければいずれ白b7の手も生じるのでほぼ互角です。白としては偶数理論維持を考えるだけで比較的簡明ですが、黒にとっては非常に難解な終盤となりました。48となった局面で黒がどう打つべきか、ぜひ考えてみて下さい。
 白の立場で考えると、下辺と上辺は黒に取られることがほぼ確定しており、左辺は白のものです。偶数理論によって白は手止まりを各所で打てるとはいえ、左辺だけしか確保できない場合は相当白厳しくなります。そこで右辺を白が確保できるかどうかが勝負となります。そのような観点から49の正解は黒e8! これなら白g7には黒h7→h8の連打、白c8→黒d8→白g7にも同様の連打、白d8→黒c8→白g7にも同様の連打がありますから、結局白はh7→黒h8→白g7と右辺を捨てざるを得ません。これなら黒2石勝ちの形勢でした。
 49c8と打ったために黒h7→h8の連打を与えない50g7が成立し、白にも希望が出てきました。51~55は斜めを沢山返す好手順。白足りないか、と覚悟していたのですが幸運にも4石勝ちでした。
 終局後「黒の勝ちがありそうですよね」と二人で検討した結果、51h8→白h7(この手で白a1→b1と連打するのはかなり白足りません)→黒e8→白d8→黒g2!という手順を発見しました。50までの局面で棋譜右下のPutをクリックし、ぜひこの手順を並べてみて下さい。以下白a1→黒b1→白h3(この手でh2は黒h3→h1の連打)→黒h2!で斜めを沢山返して黒6石勝ち。「なるほど、これなら黒が勝っていたのか」ということになったのですが、帰宅後ゼブラで分析した結果上記手順の白a1の代わりに白b1!→黒a1→白h1という好手順で白が勝てることが分かりました。やはり黒としては49が敗着で、49e8で白h7を強制する構想が唯一の勝ち手順なのでした。



Yusuke Takanashi - Takeshi Murakami

 最終戦は世界チャンピオン高梨悠介七段。気合いが入りました。17が初めて見る手。以下白やや優勢ですが、24が悪手。ここは白g5と打ち、黒f8なら白b4!、黒a5なら白d8→黒f8→白f7…がベターでした。以下難しい戦いが続きます。38は悪手。ここは白g3で互角でした。黒g4とは入りづらく(斜めが返る)、黒g4以外なら白がg4に打てます。39で高梨七段は大長考。15分近く考えてe1と打ちました。黒はg7と打ってa2を作るのも有力で、高梨七段はどのタイミングでg7を打つべきかを考えたそうです。流石世界チャンピオンの読みで、39ですぐにg7に打つのは黒2石負け形勢になる悪手でした。42が敗着。私も常にg7を意識して読んでいたのですが、42でそこに打つべきでした。以下黒b7→白h3→黒g2でまだまだ難しい戦いでした(引き分けの形勢)。実戦42は、黒g7に打たせて白h8の時に黒a2なら白h7、黒h7なら白b7で偶数を維持して粘れるだろうと考えて打ったのですが、実戦の進行で全然足りません。白b7に打つ手は一見偶数理論を維持する粘りの手ですが、実は実戦のような展開で全く得にならない、ということを42の段階で判断できないといけません。残念ながら終盤力で高梨チャンピオンに及びませんでした。参りました。

 成績は4勝2敗で5位でした。

nice!(0)  コメント(2) 

nice! 0

コメント 2

すなすけ(のぶかわ)

いつもありがとうございます。
興味深く読ませて頂いています。
私の名前ですが、ひろきと読みます

また対局できる日を楽しみにしています


by すなすけ(のぶかわ) (2009-12-02 20:29) 

murakami_takeshi

すなすけさん
ありがとうございます。お名前の読み方を間違えて失礼いたしました。訂正しておきました。
by murakami_takeshi (2009-12-03 11:33) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

印象に残った試合フランス語⑤ ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。