王座戦

昨日は王座戦に参加しました。


●Takeshi Murakami – Tomone Akashi○

1回戦は明石朋音四段。前半は互角。30はg8の方が嫌でした。以下黒やや優勢で終盤に入りますが、44と打たれた局面で寄せ方が分からず長考。最初にg2からの手順を読んだのですが、45g2→白h1→黒h2→白g1→黒e1→白g7で負けと読んでしまいました。実際にはこの手順ならば黒e1の時にブラックラインに黒石が載るため白g7が成立せず、それならば白g7の代わりに白b2→黒g7→白h8→黒h7→白a8→黒h5…で黒10石勝ち。49もこの一手と思ったのですが実は2石損。黒g2→白h1→黒h2→白g1と打ってから黒g7なら引き分けらしいのですが、とても読めません。一番悔やまれるのは4個空きになった場面。h2から打つと2石負けと数えてg2に打ったのですが、明らかに石損です(h2なら2石負け、g2なら10石負け)。名人戦や全日本選手権と違って王座戦は石数も最終順位にからんできます。それをうっかりしていたということもありますが、日頃から負けを読み切ったら別の手を打ってみる、という消去法の考え方で打っていたので、その癖が出てしまったという点が一番大きいと思います。しかし2石負けならば自分の計算が少し間違っていれば引き分けになる可能性もあるわけです。それにもう一方の手(g2)は明らかに石損と分かるのですから、とにかくh2に打つべきでした。これは大きな反省点です。


●Misato Tanizawa – Takeshi Murakami○

2回戦は谷澤美里五段。中盤で優勢を感じたのですが、35となった局面が難しく長考しました。第一感はa5ですが、黒a6→白d8→黒b8→白g8→黒a4…というような展開だとb4~e7の黒通しが脅威です。散々考えた挙句白d8→黒b8→白h4を選択。この手順はなかなか良かったようで、以下比較的簡明な白勝ち局面となりました。


●Takeshi Murakami – Ryotota Kameda○

3回戦は亀田陵太五段。この試合はPlayOkでブリッツをしている時に私が何度も経験したことのある展開になりました。37まで辺を取りまくって攻めます。白は種石がなく苦しいのですが、黒にも右下白連打の危険があります。38では白e2→黒h2→白f3→黒h1と右辺を取らせる展開で白+2だそうですが、怖くてなかなか打てませんね。白としてはブラックラインの黒通しのせいでb7に打てない(打つと黒b8!→a8の連打)のが辛いところです。実質的な敗着は42。ここはやはりe2かe1で黒h2→h1の連打を許す展開なら黒僅かに+2という際どい形勢でした。43以降はブラックラインの通しを堅持して黒が勝ちました。


●Tamaki Miyaoka – Takeshi Murakami○

4回戦は宮岡環七段。序盤で19→20となった左辺の形はあまり良くないのですが、上方の黒壁を温存できれば黒もその白の弱点を攻めることができません。なるべく上方の黒に手をつけずに打つように心がけました。35はh3が一番嫌でした。本譜35はg5の白石を返すため、白の好手d8が生じて有利になったと感じました。41~45は流石の好手順。46でも悩みましたが、左辺を取ることにしました。ゼブラによればこれは白が唯一勝てるてだそうです。48で最後の長考。第一感はc1→黒d1→白h1→黒g2→白g7だったのですが、そこで黒b2と打たれると黒h8を防げず負けと判断してしまいました。これはとんでもない読み落としで、最後の黒b2には白b1!で楽勝でした。50は黒がb8に打てないことを活用した好手。以下黒d1→白h1→黒g2は必然と考え、その結果できた左上三個空きは黒からあまり得する手順がなく(黒a1なら白のハイパー偶数、黒b1なら白a1で左辺も白がゲット、黒b2なら白b1→黒a1でb列と斜めのかなりを白が取る)、白に残ると考えました。そして51が敗着。私も宮岡七段もこれしかないだろうと考えていたのですが、実は良い手順がありました。

51の最善はg7! 以下白h8→黒g2!が素晴らしい手順。白は次にb8に打たざるを得ません(打たないと黒b8で下辺も黒に取られる)。以下黒a7→白d1→黒b1→白h1→黒a1→白b2と一本道で終局。黒はまるで手品のような手順で上辺を確保して2石勝ちとなります。ぜひ盤面右下のPutをクリックしてこの手順を進めてみて下さい。残り少ない時間のなかでこんな手順を読める選手がどれだけいるでしょうか?

ちなみに55は白の連打を見落とした失着。黒b2→白h8→黒a7→白b1→黒g7→白パス→黒a1なら黒の2石負けで済みました。


●Tomohiro Ohno – Takeshi Murakami○

5回戦は大野友弘七段。序盤は全日本で小澤巧四段と打った定石です。その時は14でf2と打って苦戦したのですが、その後PlayOkでブリッツをしていた時に私が黒でこの展開を使ったところ、14f5→黒e2→白a3→黒e6→白f3!という手順を打たれました。これは実にうまい手順だと思って使ってみました。しかし大野七段は17でa5。これで未知の展開になりました。19は悪手で、ここはやはりe6と固めるべきでした。20から22とc6に埋められると黒はなかなか厳しい形勢です。以下も逆転を許さずに勝ち切ることができました。


●Takeshi Murakami – Yusuke Takanashi

6回戦は高梨悠介世界チャンピオン・名人。ここまで二人とも1敗なので、勝った方はまだ優勝のチャンスがあります。私は序盤からがんがん辺を取って攻めます。そして41の勝負手! 以下形勢は微妙に揺れ動くのですが、非常に難しい局面の連続でなかなか解説もままなりません。敗着は51。普通はこのような黒白共に打てる一個空きは先打する一手なのですが、この場合は次に白b2→b1で第1行と第2行を両方抜かれてしまうため、黒がg1に打つ価値があまりなく、むしろ白に右上を連打させその間に黒が左上を打つという展開で第2行の黒石を幾つかでも残すほうが得でした。51の正解はb2で引き分けの形勢。実戦51以下黒は方々で手止まりを打ちますが、白の確定石が大きく逆転には至りませんでした。途中まで自分の好きな展開になっていただけに、非常に残念な敗戦でした。


●Shigeru Kaneda – Takeshi Murakami○

7回戦は金田繁七段。十数年ぶりの対戦です。彼のように、途中に長いブランクがあっても復帰してくれる選手がいるととても嬉しいですね。金田七段は以前と変わらす、一手一手に時間をかけてじっくりと読みを入れてきます。19はh2と右辺を取られるほうが嫌でした。25はd1もありそうです。白やや有利ですが33が失着。白がすぐにg1と上辺を取ってくれれば黒a4で黒も打てそうですが、白は当然先にa4と打ってきます。白a4→黒a6の交換を入れてから白g1となると、黒は上辺のウイングを攻撃することができません(黒b2には白b5。次に黒b6なら白b1→a1の連打。黒b6以外なら白a1→b1の連打)。33では黒b5と打ち、以下白a6→黒a4→白a1→黒b2→白h7→黒e1と打つのが正解で、これならまだこれからの勝負でした(白+6の形勢)。36となってはもはや黒には成す術がなく、以下双方最善で終局しました。ところで白38と打ったときにg5の黒石を返し忘れてしまい、金田七段に指摘されました。お恥ずかしい限りです。

結局5勝2敗で10位でした。今回の王座戦は対戦相手の平均段位が六段以上、メジャータイトル経験者が5人という厳しい当たりでしたが、内容的にはかなりしっかりと読んで打てたと思います。努力次第ではまだまだメジャー上位に食い込める、という手応えを感じることができました。そして優勝は私と同年齢で長年のライバルである滝沢雅樹九段。これも実に嬉しいですね。連続三年目の世界大会出場を果たした滝沢九段を見習って、私も頑張りたいと思います。

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chime_minazukishouten

お互いにきつい相手ばかりでした。全日本に続いて王座戦も40代の優勝で今後も40代のレベルがますます上がってくるでしょうね。
 私は2年連続で3大メジャーすべて出場しましたが、今年は3大会すべて3段に該当する成績で終わりました。来年は勿論3大メジャー出場となるべくは4段以上に該当する成績を目標にしたいと考えています。
by chime_minazukishouten (2010-08-30 21:08) 

murakami_takeshi

chime_minazukishoutenさん

言われてみると今年のメジャータイトル保持者のうち二人が40代ですね。若手の躍進が目立つ昨今、これはなかなかすごいことだと思います。これからもお互い頑張りましょう!
by murakami_takeshi (2010-08-31 21:28) 

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